●タイムマシンで行こう!
 「もう無くなってしまった風景をもう一度見てみたい」  なんて思ったことはありませんか?私はしょっちゅうです(笑)。そんな方にお薦めなのがコレ!『航空写真』。

 ある日ふと気づくと、ついこの前まであった空き地や建物が消えていて、さてなにがあったのか後から思い出そうとしてもこれがよく思い出せなかったりします。まあ町の成長に伴って古いものが消えていくのは普通のことですが、やっぱりちょっと寂しいですね。というわけでそんな無くなってしまった風景をもう一度見てみたいなんて思っても、家にある昔の写真だと自分の顔ばっかり写ってて景色なんかあんまり写ってないかと思います。そんな折に手にしたのが住宅地図と航空写真です。

 住宅地図っていうのは、主に配送業の人たちが使ったりする地図らしいですが、これには大きな建物は言うに及ばず民家の世帯主の名前や細かい地形なども記入されています。そんなわけでたとえば自分が子供の頃の年代のものを入手できるとかなり想像力に訴えかけてきますが、その性質上そもそも古書としての流通量が非常に少ないので、古本屋で入手しようとすると年が明けるかと思います。地元の図書館で探してもいいのですが、比較的近年に建てられた図書館だと昔の住宅地図なんか蔵書にない事が多いので、その場合は急がば回れで大手町の国会図書館に通ってちまちまとコピーを取るのが一番の近道ですので、これから手に入れようという方はこの作戦で行くといいかと思います(ってそんな事するのはあんただけだってば)。ただ目的の年代の地図が残っているとは限らず、残っていたとしても状態によっては散逸寸前で閲覧禁止の場合もあって悲しい思いをするかもしれません。

 そんなある日、近所の図書館の壁に掛かっている大きな航空写真のパネルが目に入りました。航空写真は読んで字の如く飛行機で上空から撮った、地図測量の為の写真です。モノクロで、ちょっと昔の風景が写っています。図書館の司書さんと話してるときに、場所と年代を指定すれば一般にも頒布してくれるんじゃないかということで連絡先を教えてもらいました。なお、図書館の司書さんと話す機会なんかないという方もいらっしゃるかと思いますが、子供の頃から図書館に入り浸っているとそう珍しいことでもなくなりますので、これから大人になろうという方はこの作戦で行くことをおすすめします。

 というわけで、「大きめの建物なら見分けつくかも」程度の期待で昭和49年頃の自宅周辺のものを注文してみましたが、これがまた一軒一軒の民家はおろか、車や公園のベンチまで判別できます。あまつさえ影がのびているので人が立ってるのも確認できたりするのでびっくりしました(当然ケシ粒より小さいですが)。今はもうない田畑や空き地や堀や林、ザリガニが釣れたドブ池、通っていた駄菓子屋、小学校の片隅にあった木の百葉箱や小さな水田・・・校庭に描かれたトラック上に並ぶ点は、もしかして自分!?、などど我(正気?)を忘れて見入っちゃいました。同時期の住宅地図とあわせてみれば没頭度120%アップ確実です。

 ところで実際の風景は覚えてたものとは随分と違ったものでした。確かにそこにあったと思っていたものがなく、ないと思っていたものがある、そんな食い違いがあちらこちらに出てきます。じゃああれはいつ頃ここにあったんだろう・・・と頭を捻る事ひとしおでした。

 風景は、リアルタイムで見ている分にはそう感じませんが、ものすごい勢いで変化していきます。それぞれの時代に、その時は当たり前の存在として顧みられないそれぞれのモノがあって、そうしたモノの数年分を混ぜ合わせて抽出したものが、情景となって記憶に刻み付けられていくのかもしれません。

 ちなみにこの航空写真、自分の見たい範囲がうまく1枚の原版に収まっていてくれるといいのですが、原版複数枚にまたがっていたりすると突然モザイク処理(色っぽい話じゃなくて何枚かの写真をつなぎ合わせる処理のことだそうです)やら何やらの特別料金が上乗せされてとんでもない値段になり、度肝を抜かれますから御用心(だからそんなことするのはあんただけだってば)。
【おわり】