●ベーゴマ
 ベーゴマは円錐形の金属の固まりでできた、非常に単純なコマです。表面には野球選手や関取の名前が刻印されてたりします。クレヨンを塗り込んで、文字を浮き立たせたりしたヒトも多いでしょう。桶にカンバス地のシートなんかをぴんと張って床を作り、その上で回して遊びます。相手のコマを倒すか、場外に弾き飛ばしたら勝ち。相手のコマを頂くことができます。

 勝負に強いコマは背が低く重い物、と言われていました。なんとなれば、背高のコマはペチャ(背の低いコマの事をこう呼んだ)に潜り込まれて弾き飛ばされてしまったりする訳で、なんとか相手のコマの下に潜り込もうと、みんなこぞって地面にベーゴマをこすり付けて削っていました。やりすぎると今度は回転しにくくなってしまう(そりゃそうだ)ので、その辺に各自の研究の余地があり、効果は極めて疑わしいながら、様々なチューンナップが行われていました。表面に鉛を盛り付けたり、角を落としてみたり、周囲をギザギザに削ってみたり・・・。

 さて、ベーゴマは回すのにもちょっとコツがいるので、流行ったのは小学校高学年位からでした。例えば普通のコマの場合、軸に引っかけて紐を巻いていきますが、金属の固まりであるベーゴマには軸がありません。ですから紐自体に瘤を作り、それを手がかりにして紐を巻いていきます。これにはちょっと慣れが必要です。巻けたら、それを叩き付けるようにして床に乗せます。これにもコツが必要。そんな、「ちょっとお兄さん達の遊び」でした。

 そういう訳で、数人で床を囲んでベーゴマを回すときというのは、何やら大人の雰囲気を味わうことができました。更に言えば、雰囲気が非常に賭博っぽいんですね。一体子どもの遊びというものは賭事の要素があるものですが、中でもベーゴマはその荒っぽさも手伝ってか、なんとなくサイコロ賭博でもやっているような気がしたりして・・・(時代劇でしか見たことないけど)。ベーゴマを床に叩き付けるとき、みんなの顔は妙にいっぱしの勝負師の顔になっていたものです。それにしても自分が精魂込めて調整したコマが取られたときの悔しさといったら・・・(笑)。
【おわり】